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実運用

毎朝の動画ニュースを1本1円で作る──AIに作らせない範囲を決めるという設計

TEKION AI(ループ生成・編集部確認済み)

これは「エージェント経営の現場ログ」──僕ら自身のAIエージェント運用の中身を、手順書ではなく設計判断の側から記録するシリーズだ。

2026年8月18日から、毎朝配信しているAIニュースに動画を付けた。1本およそ50秒、キャスターが喋り、図解カードが動き、テロップが出る。外部APIに払っているのは音声合成のぶんだけで、1本あたり約1円だ。

書いておきたいのは安さそのものではない。生成AIに何を作らせないかを先に決めると、費用と品質のばらつきが同時に落ちるという順序の話だ。

毎日変わるものは、実はほとんどない

動画生成というと「毎朝AIに1本作らせる」と考えがちだ。実際、素直に組むとそうなる。キャスターの映像を毎回生成し、背景を毎回生成し、動く図解を動画生成AIに投げる。1本あたり数百円かかる。

だが、毎朝ちがうのは何かと数え直すと、その日のニュースの中身だけだった。キャスターは同じ人だし、スタジオもオープニングも効果音も、昨日と同じで一向に構わない。

そこで、変わらないものは一度だけ作って資産として持ち、変わるところだけを毎朝作る形にした。

作り方 費用
キャスターの映像 同じクリップを使い回し 0円
スタジオ背景・エンドカード 番組共通のプレート画像 0円
オープニング映像 動画生成AIで1回だけ制作 0円
効果音 6種類を数式で合成して同梱 0円
図解カード 画像生成(サブスク枠内) 0円
テロップ 手元の計算のみ。APIを呼ばない 0円
合成・書き出し HTMLで組んでブラウザでレンダリング 0円
ナレーション音声 その日の原稿を読み上げる 約1円

課金が発生する行は1つしかない。

キャスターを使い回せる根拠

「口の動きが合わないのでは」と思うところだが、測ってから決めた。合成後の画面でキャスターは横幅の37%、口の大きさは約40px(1080px幅の3.7%)にしかならない。喋っていることは分かっても、発音までは読めない。だから音声と非同期のまま使い回して成立する。

一方、冒頭の自己紹介は全画面で口がはっきり見えるので、セリフを変えたときだけ作り直す。同じ「アバター」でも、画面上の大きさによって扱いが変わる

日付を映像に焼き込まない

オープニング映像は高品質な動画生成AIで作っている。1回200円ほどかかるが、文字を一切入れていないので毎日使い回せる。番組名と日付は、あとからHTMLで上に重ねている。

焼き込んでいたら、日付が変わるたびに200円かかっていた。加えて、生成AIに日本語を描かせると崩れる危険も抱え込む。文字を映像から分離した時点で、その両方が消えた。

図解は「作り直して動かす」のではなく「切って動かす」

動画の中で棒グラフが伸び、数字がカウントアップする。ここを動画生成AIにやらせると、毎回課金が発生するうえ、日本語が高い確率で崩れる

そこで手順を3つに割った。

  1. 原稿の一文から、その日の図解を1枚の静止画として生成する
  2. できた画像を部品ごとに切り出す(棒グラフ、矢印、バッジ、ラベル…)
  3. 部品をHTMLに実測座標で並べ直し、ひとつずつアニメーションさせる

肝は3番だ。CSSで描き直すのではなく、生成した絵をそのまま切って使う。だから文字も色も生成時のまま残り、崩れようがない。動きはブラウザ側で付けるので、動画生成AIに投げる必要もなくなる。

プロンプトは「変えるな」を対等に書く

静止画を動かす工程を残す場合、プロンプトの書き方に一つコツがある。

「要素を動かせ」と「文字は1pxも動かすな」は、本質的に衝突する。要素が動けば中の文字も動くからだ。捨てる順番を書かないと、どちらを捨てるかをAIが勝手に決める

だから3ブロックに分けて書く。

  • CHANGE: 動かしてよいもの。これ以外は動かさない
  • KEEP: 絶対に変えないもの。文字・レイアウト・背景・配色・カメラ
  • PRIORITY: 衝突したらこの順に従う。①日本語は常に静止し読める ②レイアウトと配色を保つ ③CHANGEの動き。③が①②を壊すなら動きを減らすかやめる

KEEPに背景を書き忘れた回は、真っ白だった背景が青灰色の雲状テクスチャに塗り替えられ、元になかった色の帯まで生えた。書かなかったものは「おまかせ」になる

テロップに音声認識を使わない

テロップというと文字起こしAIを思い浮かべるが、使っていない。

原稿は最初から手元にある。必要なのは文字起こしではなく「どの文字が、いつ読まれるか」の割り当てだけだ。音声合成の話す速さはほぼ一定なので、モーラ(音の拍)の数に比例させて時間を配れば足りる。

副次的な効果のほうが大きい。表示する文字が承認済みの原稿そのものになるので、固有名詞の聞き間違いも、無音区間に文が湧くことも構造的に起きない。旧方式で必須だった手動補正が丸ごと消えた。

表記と読みは分けて持つ

一番手こずったのがここだ。Cursor を「カーソル」と書けば正しく読まれるが、画面の文字がカタカナになってブランド表記が負ける。かといって表記のまま読ませると読み違える。

解決は単純で、表記と読みの対応表を1つだけ持ち、画面には表記を、音声合成には読みを渡す。テロップの時間配分も同じ表から引くので、字数と拍数がずれてもタイミングが狂わない。

URLは特に注意がいる。ai-agent.co.jp をそのまま投げると、ハイフンが「の」と読まれて「エーアイエージェント…」になった。カタカナで書き切り、さらに読点で1音ずつ区切って解決した。

これは文字起こしでは判定できない。3案とも同じテキストに書き起こされた。読みの検証だけは、人が聴くしかない

機械検査は品質保証ではない

無人で毎朝作る以上、人が全部見るわけにいかない。数値で判定できるものは自動で検査している。解像度・フレームレート・音声形式・尺・ラウドネス・トゥルーピークなど8項目を、書き出し直前に仕様と突き合わせる。テロップの文字コントラストや、図解が実際に動いているか(止まった画像になっていないか)も測る。

ただし、機械検査に通ることを品質保証と呼んではいけない

実際にこんな動画ができたことがある。全項目が合格し、レイアウト検査もコントラスト検査も通り、それでいて原稿が「約5倍に増えた」と語る隣で、矢印が下を向いていた。「価格半減」用に作ったテンプレートを増加の話に流用したせいだ。誤字・構図・原稿と図解の食い違いは、機械では判定できない。

機械検査の役割は品質の証明ではなく、人が見るべきものを人に残すことにある。

持ち帰れること

使い回しているのは、お金を節約するためだけではない。キャスターも背景も効果音も毎日同じなので、仕上がりが毎日ぶれない。毎回AIに作らせていたら、日によって出来の違う番組になっていたはずだ。

自動化を組むとき、「AIに何をさせるか」より先に**「何は変わらないのか」**を洗い出してほしい。変わらないものを資産にしてしまえば、AIに任せる範囲はぐっと小さくなる。小さくなった範囲は、安く、速く、そして安定する。

コストの話に見えて、これは品質の話でもある。

泉水亮介

この記事を書いた人

泉水亮介 / Ryosuke Sensui

TEKION Group CEO / 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員研究員

非エンジニアとして2022年からAI駆動開発を実践し、100を超えるアプリ・AIエージェントを開発。国内唯一の大学単位認定Vibe Coding講義(武蔵野大学)を担当し、TEKION Groupでは自作のAIエージェント基盤で自社業務の9割以上を回している。

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#現場ログ#動画生成#自動化#コスト設計

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